精神障害者スポーツ大会

大会の歴史と概要

精神障害者のスポーツ大会の歴史

一昔前まで、日本で精神障害者スポーツといえば、精神科入院患者の余暇充実やリハビリテーションを目的とするものがほとんどでした。ところが、入院患者の高齢化や入院期間の短縮化に伴い、外来通院患者やリハビリテーション施設通所者がスポーツに接する機会は飛躍的に増加してきました。まさに、精神科領域において入院施設中心から地域主体のスポーツへの移行期にあたると考えられます。

こうした状況を踏まえ、(公社)日本精神保健福祉連盟では「精神障害者スポーツ推進委員会」を中心に、1999年より精神障害者スポーツの振興事業を行なってきました。具体的には、全国精神障害者スポーツ大会・ブロック大会の開催や、都道府県レベルでの精神障害者スポーツ推進協議会などの組織作りなどに取り組んできたところです。

2001年、宮城県仙台市において第1回全国精神障害者バレーボール大会を開催しました。ソフトバレーボールを使用すること、常に最低1名の女性選手が入ること以外、6人制バレーボールのルールを原則としています。日本における全国レベルでの精神障害者のスポーツ大会としては初めての試みで、画期的な出来事として評価されます。

2002年においては全国精神障害者バレーボール大会を全国精神障害者スポーツ大会と名称変更し、第2回全国障害者スポーツ大会のオープン競技として精神障害者バレーボールが認められ、準公式参加が果たすことができました。また、全国大会への予選会を兼ねた精神障害者バレーボール・ブロック大会の開催も始まりました。

こうした大会の積み重ねから、参加県・参加者数は年毎に着実に増加、2008年に大分県で開催された第8回全国障害者スポーツ大会より精神障害者バレーボールが正式競技となり、また、2019年から卓球が正式競技となりました。

また、精神障害者スポーツの国際化を目指して、2011年3月には精神障害者フットサルチームのイタリア遠征が実施され、交流試合が行なわれました。精神障害者のスポーツチームの海外遠征という快挙です。

こうした一連の振興活動に対し、学術団体である日本精神衛生学会が制定している土居健郎記念賞を2011年に「精神障害者スポーツ推進委員会」が受賞することができました。

さらに、2013年10月5日に東京・明治学院大学において、第1回精神障がい者国際シンポジウムが開催され、海外7カ国(イタリア、イングランド、デンマーク、ドイツ、アルゼンチン、ペルー、韓国)からの招待者を含め260名以上の参加があり、成功裏に終了することができました。各国関係者の障害やスポーツに対する歴史的背景や考え方は多様でしたが、このシンポジウムを契機に、母国での精神障害者スポーツ発展の起爆剤になるという意見が聞かれたことは大きな収穫の1つです。最後に、「精神障がい者スポーツ東京宣言2013」が採択され、精神障害者スポーツ領域における国際間の交流促進と国際組織の構築が確認され無事閉幕しました。

このシンポジウムの結果を受けて、10月7日に日本精神科病院協会会議室において、クローズの形で第1回精神障がい者スポーツ国際会議が開催され、各国で最も盛んなサッカー・フットサルをモデル競技として国際大会開催を目指すこと、対象疾患としてはF2、F3を主要疾患と想定するものの、他の競技や他精神疾患も排除するものではないことが確認されました。2015年には大阪でサッカーを中心とした国際交流スポーツ大会開催が予定されています。

ところで、精神障害者スポーツの振興が当事者のQOLを向上させるとともに、精神障害・精神障害者への偏見・誤解を除去する啓発効果があるのは間違いありません。娯楽性重視の立場から、障害に見合ったルールの簡略化を求める声がある一方で、競技性重視立場から競技の厳格運用こそが真のノーマライゼーションにつながるという意見もあります。どちらも大切ですが、精神障害者スポーツの中に競技性や専門性を重視する視点が導入された意義は大きいでしょう。また、精神障害者のプライバシー確保や権利擁護に関してですが、全国障害者スポーツ大会の参加に際しては参加者名簿の提出が原則で、氏名などが明示され、積極的にマスコミなどに取り上げてもらいます。参加選手の声を聞くと、個人情報の公開化に関しての抵抗感は少ない反面、家族や関係者が旧態然としたプライバシー保護に固執する姿勢が認められるなど、その意識改革が求められています。

私たちは日本発の精神障害者国際スポーツ大会の実現をはかるなど、多くの夢をもっています。皆様からのさらなるご理解・ご協力を願うところです。

精神障害者スポーツ推進委員会 委員長 大西 守

精神障害者スポーツ推進委員会委員

役職名 氏名 所属
委員長 大西 守 公益社団法人 日本精神保健福祉連盟 常務理事
事務局長 高畑 隆 公益社団法人 日本精神保健福祉連盟理事
委員 阿部 裕 四谷ゆいクリニック院長
井上 誠士郎 特定医療法人 朋友会 石金病院 外来医長
岡村 武彦 医療法人 大阪精神医学研究所 新阿武山病院 院長
勝嶋 雅之 一般社団法人 日本作業療法士協会
河本 次生 埼玉県立精神保健福祉センター
社会復帰部 復職支援担当
瀬川 聖美 社会福祉法人 本郷の森 理事長
田所 淳子 高知県安芸福祉保健所 健康障害課 主任
草地 仁史 一般社団法人 日本精神科看護協会 政策事業部門 看護政策企画部長
水島 仁 立川病院 精神神経科
鎗田 英樹 帝京平成大学 健康医療スポーツ学部 リハビリテーション学科 准教授
顧問 中森 邦男 公益財団法人 日本障がい者スポーツ協会
日本パラリンピック委員会
委員長補佐・東京パラリンピック担当
オブザーバー 伊東 秀幸 田園調布学園大学 人間福祉学部 教授
白木原 市次 北里大学教学センター事務室
総合体育館トレーナー室 スポーツ指導員

精神障害者スポーツ事業基金補助金

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